心臓が働いています。
ドキドキドキ。
心臓が最近よく働きます。
ある人のことを考えると心臓がよく動きます。
身体はとっても眠いのに、心臓はドキドキドキ。
だんだん頭も冴えてきた。
あ、明日会うのか。会えるのか。何時だっけ。あと20時間後か。
早くその時になって欲しいような。怖いような。
そわそわそわそわ。
手に力が入りません。ペンを持ってもスマホを持ってもすぐ滑り落ちるような。
二の腕のあたりが痛くなってきた気がする。
その間も心臓はせわしない。
耳の近くに心臓があったのかな。いやでも喉の下がつっかえるからその辺りにあるかも。
普段の私は電車を5分とて、
レジの行列を並ぶのもいやだ。
でもその日の待ち合わせ場所には
15分前にきた。
ううん。早く来すぎたかな。
風が強かったから髪の毛ボサボサしてないかな。
口紅は、はみ出ていないかな。
スマホいじりながら待っていたら節操がない、かな。
うんうんうんうん。と頭を働かせていると
あくびをしているあの人を見つけた。
ふふ。あの人はあくびをしているよ。ふふ。
肩の荷をそこに下ろして、あの人のもとに近づいた。これはいらないものだ。
左から見るあの人の顔。
右から見られる私の顔。
じっと見ていたいけど、見ていると見られる。
たまに真正面から覗いてくるなんてズルい人。
変なの。さっきまで騒いでいた心臓は借りてきた猫のようになった。
この人のあくびが私の心臓を寝かせたのかな。
別れ際は覚悟だった。頭と心臓の戦い。
頭ははやく帰るのよ。ここで帰るのがいい女。と急かす。
心臓は、もう少しあともう少し近づくの。もう少しの時間、一緒にいるの。
名残惜しさをあの人にプレゼントするつもりが
渡しきれなかった。
帰ったタイミングもいい女ではなかった様な気がする。
背伸びをした、座面が小さい脚の長い椅子に座ったから
私は左のお尻が痛い。
お尻が痛むたびに幸せだった夜を思い出して、口元が緩む。しばらく痛みが続けばいい。